新作 ネット小説「その先にある自由」第3章~第一の国『無国家王国』 [小説「その先にある自由」]
「その先にある自由」
第三章 第一の国『無国家王国』
この国は、最初に分裂を宣言した国である。
最初に目覚めた人たちが大半を占めていた。
だからこそ意思や感情も、豊かではあった・・
だからこそ、今までの偽りの世界をいち早く知り、立ち上がったのである。
目覚めのきっかけは、自分自身生きているのがつまらなくなり、その瞬間、胸にイライラする感覚が走ったのだった。
それは自分への怒りでもあり、自分の置かれている環境へのいかりでもあった。
ここに集まる者たちの共通点は最初に強く感じたものが「怒り」というものであったということ。
簡単に言うなら、自由を奪われていた怒りによって目覚めた者が、たどり着いた場所である。
「自由こそすべて!」と、怒りによって目覚めてしまった人たちの国である。
そのため、最初はうまくいっていたが「怒り」では社会は成り立つはずもなく・・
やがて法も秩序も何もない、ただの無法地帯と化していった。
嫌なことがあれば争い・・
欲しいものがあれば奪う・・
自分の自由を得るためなら人を殺してもしょうがない・・
どんどんエスカレートしていった。
これも自由、あれも自由、全て自由・・・
感情の中で怒りがもっとも強い人たちには、自由という意味を考える思考回路はすでになかったのだろう・・
そして気付いた頃には、この世のものとは思えない、地獄のような世界が誕生していたのであった・・
感情の欠けている人たちが、平等や自由を求めるには、難しすぎるものであったのだ・・
その後は、己の力で自由を手に入れる、まさにピラミッド型の典型的な、弱肉強食の国が出来上がっていったのであった。
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